こんにちは。筆者です。
「現代アートってわからない」って思っている方って、結構多いです。形、意味が全く理解できないものもありますし、「そんなことして何になるの??」という作品が多いことも事実。
少し前に、壁にバナナを貼り付けた作品(マウリツォ・カタラン)がとんでもない価格で落札されるというニュースが回ったとき、身の回りから「現代アートってこんなことになってるの??」と聞かれることもありました。
現代アートLOVERで、現代アートに関する修士号を持っている筆者が、現代アートを楽しむようになれるコツ、アドバイスを少し紹介します。
現代アートって「わからない!!」
現代アートに関する感想で多いのが、「難しくてわからない!!」という意見。
確かに、現代アートの中には、一眼見ただけでは分かりづらい作品もたくさんあります。
- 便器
- グロテスクな彫像
- 露骨な性描写
- etc
安心して欲しいのですが、現代アートは多種多様になりすぎていて、専門家でも全てを綺麗に理解、説明できる人はほとんどいません。
美術館などで解説している人も資料に用いてその人なりの解釈で説明しているだけで、ちゃんと理解しているかどうかは定かではないのです。
また、現代美術においては、多くの場合、「観客の解釈」という視点がそもそも作品のコンセプトに入れ込まれている作品もあります。つまり、「わからない」という感情、感覚を含めてアートの一部であると考えて良いでしょう。
「現代アートがわからない!」は普通なこと。
現代アートを楽しむ3つのアドバイス
極論を言ってしまえば、現代アートは個々人で好きなように楽しむのがベストだとは思います。
しかし、ここでは初心者の方のために、少しでもアートがわかりやすく感じられるアドバイスを紹介します。
あくまで個人的なアドバイスなので、話半分で見てみてくださいね。
作品、展覧会を「すべて理解しよう」としない
まず、作品、展覧会と、私たち鑑賞者の間には、マッチングアプリのような感じ。
そもそも私にはわからない作品だった、私むけの展覧会ではなかった、ということが多いにあり得ます。
すべての作品を見ただけで理解することはできるわけがありません。
「変な作品だな」と思ったら「変な作品」という理解をしてしまえばよかったりもします。
私自身、現代アートの作品を見ただけで理解できる自信はありません。
ただ、作品が展覧会に出品されている、作品が私たち大衆の目につくところにあるということは、その作品を展示している人が「社会にとって有益である」という判断をして飾っています。
誰も理解できない、誰にとっても価値がないとされている作品は、展示されませんよね。
私たちが理解できない、わからないと感じている作品も、誰かにとっては素晴らしい作品だったり、誰かにとっては真っ直ぐに話しかけてくれる作品だったりします。
全てを理解しなくてもいい。
でも、私たちがわからないと感じた作品も、他の誰かには価値がある作品である。
「わからない」「理解できない」という感覚を楽しむ
今の世の中には、「理解できる」もので溢れています。
例えコンピューターがわからなくでも、Googleで検索すれば簡単に説明してくれる動画やウェブサイトがたくさん出てきます。
逆に、これほど「わからない」というレッテルが貼られているのは、現代アートぐらいなのではないでしょうか。(現代思想も近いかもしれないですね)
人間は、病気や死など「わからない」ものを遠ざけるために、科学、人文学を発展させて、「わからない」を「わかる」に変えてくる努力をしてきました。
宇宙科学、素粒子科学などを除けば、日常の中に「全くわからない」ものが潜むことはなくなってきています。
「わからない」という自然な感情があまりにも日常から切り離されてしまっている世の中に私たちは住んでいます。
でも、本来は「わからない」という感情は好奇心の源であり、私たちがみずみずしく生きていくために必要なものでもあります。
「現代アートがわからない」という感情はネガティブなものでは全くなく、日常に「わからない」が入ってきてくれたと捉えると、より楽しく「わからない」と付き合えるようになります。
私自身、「わかる作品」に出会うより、「わからない作品」に出会う時の方がワクワクします。
「アートの価値=値段」ではない
最後に重要なことを言います。
アートの価値は必ずしもアートの値段とは一致しません。
確かに、高値で取引されているアート作品は色々な人から欲しいと思われている作品であることが多いため、ある程度「いい」とされるアートは価値が高くなる傾向があります。
しかし、ニュースで見るようなレベルで高額で取引されているアートは、アートの価値に付随して、アートマーケットの力であったり、政治的な力が働いて、価格が釣り上がっている作品も多いです。
例えば、冒頭で紹介したマウリツォカトランのバナナをダクトテープで貼った作品は、作品自身がアートマーケットの投資、取引価格を皮肉った作品でもありました。
また、サウジアラビアの皇太子に入札されたダヴィンチ作(真偽は不明です)の「サルヴァトールムンディ」も、作家が本当に買いたかどうかが不明、つまり美術史的に価値があるかどうか不明であるにもかかわらず、石油マネーの力で強引に手に入れた作品と言えるでしょう。
ニュースで見るようなアートマーケットの価格は、作品自体がどのような価値があるか異常に、アートマーケット、政治がどのように動いているかが重要だったりするので、話半分に聞いておきましょう。
現代アートの初心者の人におすすめしたい本
- 「現代美術史 欧米、日本、トランスナショナル」
- 「めくるめく現代アート イラストで楽しむ世界の作家とキーワード」
- 「みんなの現代アート──大衆に媚を売る方法、あるいはアートがアートであるために」
- 「現代美術史 欧米、日本、トランスナショナル」
現代アートの潮流をテーマごとにわかりやすくまとめた作品。
いわゆる「とっつきづらいハイコンテクストな現代アート」だけでなく、貧困、戦争などの社会問題にアートがどう答えているかという視点での解説で、アートに馴染みがない方でも、わかりやすく読めます。
文庫本なので、手軽に読むことができます。
- 「めくるめく現代アート イラストで楽しむ世界の作家とキーワード」
現代アートを作家、テーマごとにまとめた書籍。
現代アートにおいて、よく聞くインスタレーション、サイトスペシフィックというような聞きなれない言葉も簡潔に解説しています。
重要な作家、重要なキーワードを調べるための辞書的な使い方もできる書籍です。
- 「みんなの現代アート──大衆に媚を売る方法、あるいはアートがアートであるために」
読み物として面白いです。
実際にアーティストして活躍する作者が、現代アートのシステムを皮肉をたっぷり交えて解説しています。
現代アートってアホらしくない?と思っている人にこそ読んでもらいたい本です。